第102回全国高校サッカー選手権大会は、2年振りに青森山田高等学校が全国を制覇した。
常勝軍団としてその名を轟かせている青森山田はなぜ強いのか?
その真相に迫るべく、キーマンとなる黒田剛前監督にスポットを当て、紐解いていきます。
青森山田サッカー部歴史
1970年 サッカー部 創部
1989年 田口光久監督が就任。この頃から強化が始まる。
1991年 全国大会に初出場を果たす
1994年 黒田剛監督が就任。更なる強化を進める
1997年 この年以降、全国高校サッカー選手権に毎年出場する強豪校となる
獲得した主なタイトル
■全国高等学校総合体育大会サッカー競技会 優勝(2005年、2021年)
■高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ 優勝(2016年、2019年、2021年、2023年)
■全国高等学校サッカー選手権大会(2016年度、2018年度、2021年度、2023年度)
黒田剛(くろだ ごう)前監督 経歴
1970年5月26日 生まれ。北海道札幌市出身。
登別大谷高等学校(現:北海道大谷室蘭高等学校)、大阪体育大学でサッカー選手としてプレーしたのち、1993年から星野リゾートのコーチをしながらホテルマンとして勤務。
北海道恵庭北高等学校、室蘭大谷高引率教員を経て、1994年に青森山田高等学校のサッカー部監督に就任しました。
青森山田高等学校サッカー部就任後は、同サッカー部を常勝軍団に育て上げ、
1997年以降は毎年全国大会への出場へ導き、その後、数々のタイトルを獲得していきます。
2022年、前年度2021年に全国高等学校サッカー選手権大会で同校を優勝に導いた後、退任。
2023年シーズンよりFC町田ゼルビアのトップチーム監督に就任します。
2023年5月度、月間優秀監督賞を受賞。
就任初年度でチームをJ1昇格に導きました。
黒田前監督考案の練習方法
青森山田高校のある青森市は、年の3分の1は雪で覆われる豪雪地帯です。
年中グランドが使える他県のチームと比べると圧倒的な不利な環境と言えます。
そんな中、黒田前監督はその環境を逆手に取り、「雪の上でしかできない練習」を考案します。
それが「雪中サッカー」です。
雪中サッカー
50人対50人のチームに分け、使用するボールは3個。2点を先に取ったチームが勝ちというルールです。
選手は、ひざ、あるいは腰まで雪に埋まりながらボールを蹴り、走り続けます。負けたチームは、隣の野球場に積もった深い雪の中を400メートル走らされました。
雪の上での全力疾走は足を取られ、足腰に大きな負担が掛かります。
結果的にそれがすばらしいトレーニングになり、サッカーにとって必要な体幹、当たり、キック力を選手達は手に入れました。
雪国でなければ出来ないトレーニングです。
黒田前監督はデメリットをメリット変えてしまったのです。
黒田前監督の信念 “100%”がもたらすもの
2021年、青森県の選手権予選で、青森山田は弘前中央に22-0で勝利しました。
これに対し、SNSでは「やりすぎなのではないか」といった声が多数あがりました。
このような批判を受け、黒田前監督は下記のような発言をしています。
■「相手がどこであろうと100%の思いでぶつからないと相手に失礼」
■「どんな時も、持っているものを100%出し続ける習慣が大事で、(あきらかな勝ち試合でも)ダラダラやるチームに次の勝利はない」
■「常に100%で取り組むことが尊いことだと思ってる」
また、人間は満足した瞬間に成長が止まってしまうという理由から、
所謂「褒めて伸ばす」という教育方法には否定的な意見を持っています。
仮に、80%の力しか出してない人間を褒めてしまうと、その人が本来出せるはずの100%の力を出さずに終えてしまう可能性があるというロジックです。
その後の人生で勝利のチャンスに結び付くような、「価値ある挫折」「意義ある敗北」を経験できるのは、「100%の力を出し切って、夢や目標に向かって死にもの狂いで頑張ってきた人だけではないか」とも述べています。
黒田前監督にとって、“100%”は重要なキーワードだということが分かります。
まとめ
青森山田の強さの裏付けとも言われる、組織力であったり、優秀な選手が全国から集まるなどの理由は、どの強豪校にもある程度あてはまる話しだと思います。
やはり、こちらで紹介しきれなかったものも含め、黒田前監督が何年もかけ築きあげた礎こそが、青森山田の強さの本当の理由ではないでしょうか。
2023年、黒田前監督の意思を受け継いだ正木監督は、就任初年度に全国大会優勝に導きました。
常勝軍団青森山田のサッカーはまだまだ進化を遂げそうです。
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